ICTが産業界に大きな衝撃をもたらして久しい。これまでの業界勢力図を大きく塗り替え、ビジネスモデルの改革を余儀なくされているところもあるほどだ。その代表例が
証券業界だろう。「
ネット証券」の登場により、数年前なら営業担当者に電話で売買を依頼していた取引が、インターネットを介して基本的に1日24時間いつでも可能となった。この手軽さと手数料の低価格化は個人投資家を急増させる要因となり、彼らは機関投資家と同等の勢力を持つようになった。ICTはビジネスの仕組みだけでなく、顧客構成まで大きく変えてしまったのである。
ICTとは、情報・通信に関連する技術一般の総称である。従来ひんぱんに用いられてきた「IT」とほぼ同様の意味で用いられるもので、「IT」に替わる表現として日本でも定着しつつある。ICTは、多くの場合「情報通信技術」と和訳される。IT(Information Technology)の「情報」に加えて「コミュニケーション」(共同)性が具体的に表現されている点に特徴がある。ICTとは、ネットワーク通信による情報・知識の共有が念頭に置かれた表現であるといえる。
インターネット広告という新業態も登場した。既に広告取扱量はラジオを抜き去り、広告を主収入とするポータルサイトや検索エンジン、ネット広告関連企業は、右肩上がりの成長を続けている。最近ではブログやSNSを利用した広告やマーケティング手法も注目され、期待感は高まるばかりだ。
また、コンテンツ配信サービスもICTによる新産業と言えるだろう。音楽、アニメ、映画、ゲームといったコンテンツを有料で配信するシステムであり、インターネットショッピングと併せて取引額が急増している。ストリーミングによる動画を無料で提供して収入は広告から得るなどの事業もあり、インターネットを使ったビジネスはますます広がりそうだ。
ICTの普及により、ICTに精通した人材へのニーズはますます高まっている。とりわけ各分野のエキスパートは人気が高く、ひっぱりだこの状態である。
たとえば顧客の要望を丹念にヒアリングして新しい情報システムを構築するITコンサルタント。彼らはICTに関する技術全般だけでなく、SCMやERPといったソフトウエアに精通している必要がある。SCMとは受発注から原料調達、在庫管理、配送までを統合管理するもので、ERPは会計や販売など企業の基幹業務を支援するものだ。
システム設計で最上流工程に位置するビジネスコンサルタントも注目職種だ。システムの導入だけでなく、企業の経営戦略や事業展開の提案を行い、業務の内容やフロー、組織構造などに改革を促す仕事だ。企業トップと二人三脚で仕事を進めるため、技術と事業経営の両方の資質が問われる。
ネットワークエンジニアやセキュリティエンジニア、メンテナンスSEなどの活躍の場も広がっている。ネットワークエンジニアは、その設計、構築、最適機器の選定が主な仕事である。セキュリティエンジニアは外部からの不正アクセス防止や、社内情報の流出を防ぐなどの重要な役割を持つ。
比較的地味なメンテナンス
SEのニーズも増す一方だ。ブロードバンド化により大容量のデータ通信が一般化した現在、システム障害は企業の生命線を左右する一大事となる。トラフィック数など通信量を把握してサーバーを管理し、あるいはネットワーク全体の運用を監視し、トラブルが起これば原因を突き止めて迅速に対処するメンテナンスSEは、システムの維持・管理になくてはならない存在である。

こうした現場の
エンジニアをマネジメントし、戦略の策定から計画の遂行までを担当するのがプロジェクトマネジャーだ。技術力もそうだが、プロジェクトを成功させるための管理能力やチームをまとめる
コミュニケーション力が大きく求められる。
●システムエンジニア
SE。システム化の提案から運用、管理、サポートまで、さまざまなプロセスでシステム構築を広範囲に担う。プロジェクトマネジャーやコンサルタント、技術特化型エンジニアなどへのキャリアパスがある。
●プロジェクトマネジャー
システム開発プロジェクトの計画、推進、管理などを行う責任者。技術的な知識や経験と共に、リーダ-シップや論理的思考力、コミュニケーション能力などが問われる。
●システムアナリスト
経営戦略に基づいて情報関連の戦略を立案、システム化計画の策定や開発支援、評価などを行う技術者。SEでは最高の資格であり、実務経験が問われる。
●情報セキュリティ監査人
企業内の情報セキュリティ対策の状況をチェック、必要に応じた改善策を提言する。物事の本質を見極めようとする姿勢やコミュニケーション能力が問われる。